かみ締めた唇
守るだけの力が欲しい。
誰でも、何人でも、
救えるならそれで良かった。
自分がどうなろうと、
構わなかった・・・。
――いくら四番隊の隊長だからと言って、
万能なわけではありません。
今の貴方達のように、
不安で押しつぶされそうな時もありました、
自分が嫌で嫌で仕方のない事だってありました。
だから無理をせず、
自分のやり方で、自分の歩幅で、
より多くの人を助けられるよう頑張ってくださいね――
「あー・・・卯の花隊長、綺麗だったなぁ・・・」
「まだコイツ言ってるし・・・。いい加減にしろっての」
「まぁ、いいんじゃないかな?
ホラ、卯の花隊長だって自分の歩幅で。って言ってたし」
四番隊の新人隊員の会話。
今、彼らは毎回恒例である、自身の隊の隊長からの
新人に向けての言葉を聞き終わった後であるらしい。
ちなみに、そんな彼らの後ろには・・・。
「私の言葉、しかと聞いていて下さったのですね」
「「「うっ!卯の花隊長!?」」」
なぜか、当のご本人がいた。
「卯の花隊長!どうしたら、卯の花隊長のようになれますかっ?」
「あっ!てめ、いきなりそんな事聞いて失礼だろうがっ!!」
「おっ、落ち着いてよっ、二人ともっ!!隊長、す、すみません・・・」
「良いんですよ?仲の良い事、元気な事は、良い事ですから」
ほのぼの(?)雰囲気の廊下。
あの後、卯の花は新人三人組をお茶に誘ったのだった。
(ちょうどお茶にしようとしていたので。
というのが、後で副隊長が彼女から聞いた理由だ)
「んー、私のように。ですか・・・。コレは一体どう答えれば・・・」
クスクスと笑いながら考える、卯の花。
「隊長っ!良いんですよっ、こんなやつの質問なんか答えなくても」
「なっ!?なにそれぇ!!」
「だぁもうっ!!二人ともっ!隊長の前でケンカしないっ!!」
「「・・・・ゴッ、ゴメンナサイ・・・・」」
(本当に仲の良い三人ですね)
またクスクスと笑いながら三人を見つめる卯の花だった。
そして。
「あっ、そうだ。
貴方の質問の答えになっているかどうかは分かりませんが、
少し、私の昔の話を聞いてはくれませんか?」
「隊長の、ですか・・・?」
「はい(ニッコリ)」
コクコク コクコク
疑問符を浮かべる1人と、
うなずく二人を見て、卯の花は静かに語りだした。
「それは、私が貴方達のように新人の死神だった頃の話です。
その頃はまだ、虚達との戦闘が今のような
こちらが有利な戦いが出来ずにいて、同等、
それ以上の不利な戦いを強いられていた頃の話です」
「どうして、不利だったんですか?」
「まだ、虚達のことをよく知らなかったから、ですよね?」
「ええ・・・。
だから、虚との戦いが時折長引いてしまう事がありました。
まさに現世の戦争のような戦いです。
そんなある長期の戦いに、私が出ることになったんです。
救護班が足りなくなり、補充員として」
そして、その戦場で私が今まで、
きっとこれからも忘れられないであろう、出来事があったんです。
(・・・そう言う隊長の顔は、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、
泣いているように見えた・・・)
「大雨の中、小さくなっていく霊圧だけを頼りに
私は多くの人々の治療をしていきました。
助けたい、命を救いたい。その一心で、私は戦場を駆けずり回りました。
・・・そこで、一人の死神に会いました」
・・・下半身を虚に喰われてしまった死神に・・・
「・・・え?・・・」
「そん、な・・・」
「・・・・生きていた、んですか?・・・」
「・・・辛うじて、ですけど・・・」
呆然となっていた自分の奮い立たせ、急いで駆け寄った。
『だっ!大丈夫ですか?!いま、助けますからっ!!』
目が空ろで、本当に今まで生きていたのが不思議な位だった。
近くにある大きな地面の傷痕は、恐らくこの死神が
虚とともに死のうとして出来たものであろう。
『・・・ヒュー・・・・ヒュー・・・・』
『聞こえますか?しっかりしてくださいっ!』
懸命に鬼道を使い助けようとする。
だが、それをあざ笑うかのように、
その死神の呼吸は小さく、弱くなっていく。
『(このままでは、この人がっ!!)』
『だれかいるかっ?!なっ!?アンタっ!何してんだ、こんなところでっ!!』
『この人を、助けようとっ!お願いです、手伝ってくださいっ!!』
四番隊ではないかもしれない
もしかしたら十一番隊の人かもしれない。
でも、自分一人ではどうしようも出来ない事でも、
助けられない人も、二人なら何とかできるかもしれない。
そう卯の花は思った。
だが、戦場はそんなに甘いものではない。
『何言ってんだ、アンタ!!
なぁ、コッチに重症な奴がいる、
その死にかけなんかほおっておいてコッチの奴を!』
愕然とした。
死にかけの奴と、重症の奴。
この二人を天秤にかけろというの?
死にかけてる人は、おいておけと、捨てろというの?
気付いたら、目の前の人に怒鳴っていた。
怒鳴るなんて事、初めてかもしれないと頭の片隅で考えながら・・・。
『人の命は、ほおっておけるものではありませんっ!!
この人を助けたら、そちらの方も助けますっ!だから、だから今はっ!!』
『甘いことをいってんじゃねぇ!!』
『!!』
『ココは戦場だ。アンタは誰かを救う事ができる。俺は出来ねぇ。
俺が見つけた奴は、うまくいけば生き残れるような奴。
ここで天秤にかけろ。
アンタだって、分かってんだろ?ソイツは、』
シヌンダヨ、アンタガナニヲシヨウト
死刑を宣告されたように気がした。
鬼道は得意で、難しいとされる怪我、病気だって治したことがある。
あぁ、そうか。
私はきっと、うぬぼれていたんだ。
平和な世界で自分は神にでもなったつもりだったんだ。
そんな驕り、ここのような生と死が入り混じっているところでは、
何の価値もないのに・・・。
かみ締めた唇から、鉄の味がした
結局、私は助けようとした人を見捨てた。
その戦場で私は、診て、生き残れないと判断した人を次々と見捨てた。
学校にいた頃は、考えもしなかったこと。
助けられるなら、どんな事でもしようと思った。
自分がどうなったって、と思っていた。
甘い考えだった。
「・・・・貴方達も、多くの命を救いたいと思っているでしょう。
でも、そんなの甘い考えです。
自分の力量を知り、情に流されない不屈の心を持ちなさい。
助けられる命と助けられない命、一緒にしてはいけません。
命の選別をしろと言っているのではなく、助ける順位を考えなさい。
そうしなければ、救える命は救えずに、
自分の中に後悔だけが残るのですから・・・・」
今でも、その話は自分の中に生きている
今でも、その話をした時の隊長の顔を忘れない
今でも、多くの命を救いたいと思っている
自分が後悔しないために
後書
羽 暗・・・・
卯 ですねぇ
羽 ココまで、ダークにするつもりなかったのに・・・
卯 でもダーク、ですよね?
羽 ・・・・ハイ・・・
卯 でも、命の大切さとか、そんな真剣な感じが伝わってきますよ
羽 た、隊長・・・(感涙)
三人
無駄に長いけどね
羽 ウッ!!
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