01:太刀風
俺は、その風に惹かれたのかもしれない。
戦いでしか生まれないことのない、その風に、
戦いでしか感じることの出来ない、その風に。
きっと、惹かれたんだ・・・。
『隊長って、何時からそんなに戦い好きになったんです?』
アイツにとっては、何気ないものだったんだろう、その質問。
だが、俺にとっては久しぶりに頭を悩ませるものだった。
「・・・何時からからだったか?・・・」
「もぉ!!剣ちゃん、またそれで悩んでるぅ!
いーじゃん、ツルリンの質問なんか忘れてやちると遊ぼうよぉ!」
ギャーギャー頭の上で騒いでるやちるを無視して、いまだに考え続ける剣八。
一見何時もの風景に見えがちだが、
何時もの風景を知っている者からすればかなり、異常な光景である。
本当ならば、ここで考え事している剣八が折れるか、
やちるが飽きて、他の部下にターゲットを変えるかを、しているはずだからだ。
剣八のほうはともかく、なぜこうもやちるが食い下がっているかというと・・・。
「隊長を、取られたような心境なのかな。副隊長は」
「そうだと思うぜぇ。じゃなきゃ、あそこまで食いさがらねぇだろうしよ」
というわけだ。
「しっかし、隊長があそこまで考え込むとはなぁ。ただ何気なく聞いただけなのによ」
聞いた俺が驚きだぜ。と一角。
「そうだよねぇ。でもいったん気になったら、
思い出すまで気になることってあるじゃない?多分、今の隊長がそうだと思うよ」
「そんなもんかねぇ・・・」
何時ものようで何時ものようではない二人を見つめる二人。
こうなった原因は自分にあるとはいえ、どうすることも出来ないでいる、一角であった。
――その夜――
騒ぎすぎたのか、何時もより早めに寝てしまったやちる。
その姿を見て、仕方がなく布団をかけてやる剣八。
そして、また考え込む。
彼は遠い遠い、自身の記憶の中へと入っていった・・・。
彼の生前の記憶というものはあまりにも遠い昔のことで、
彼自身とてもおぼろげにしか思い出せないでいた。
しかし、その中の記憶に彼の探している答えがるはずだった。
(思い出せねぇ・・・。俺は一体、どこで戦いを楽しむようになった?)
どうして彼が、戦いしか興味を示さなかった彼が
ここまで自身の記憶にこだわるのにはある理由がある。
それは・・・、一角の質問で思い出した遥か昔の小さな記憶のピース。
たった一言の言葉と、吹き抜ける風の感触。
『戦いが本当に好きなんだなぁ、――――は・・・』
―――サァァァァァ―――
(これを、俺はどこで感じた?どこで聞いた?誰から?)
考えても、思い出そうとしても彼の頭の中からこれ以上の記憶が蘇る事はなかった。
「・・・チッ。しゃあねぇ、少し頭をすっきりさせるか・・・」
そっと、寝ている少女を起こさないようにその場を後にした。
(・・・夜中だし、霊圧上げたらまずいよな・・・)
ただでさえ人一倍垂れ流している以上、これ以上上げれば隊長クラスが起き出すは
霊圧が低いものは、きっと寝ながら失神という世にも珍しい体験をする事になるだろう。
愛刀と、自分専用につくられた自主練用の人形を持ち出し打ち込んでいく剣八。
ガンッ! ガッ!、ガガンッ!! ガツンッ!!
(やっぱ、こんなんじゃあ楽しめるはずもねぇか・・・。
・・・!この感じっ!確か前にも!)
打ち込みながら思う彼の脳裏に、ある記憶がよみがえった。
まだ、彼が幼い頃。
誤って戦場に出た彼。
そこに待ち受けていたのは、
真っ赤な血と、
動かなくなった大人、
死、そして、風。
モノクロだった彼の景色に、色が灯った。
何も感じなかった心に、戦慄が走った。
そんな瞬間の記憶。
(そうだ、そこからだ!もっと、もっと風を感じたいと思ったのは!
退屈で、生きている意味さえ分からなかった俺に、生きて楽しみたいと思ったのは!!)
それから幼かった彼は学んだ。
戦い方を、1人で、独学で。
戦いで、あの風を身近に、もっと近くに、はっきりと感じたいがために・・・。
いつのまにか、彼は打ち込むのを止めていた。
・・・そうだ、俺は戦いの中でしか生まれないあの風が欲しかったんだ・・・。
戦い、死と向かい合うスリルはいい。
しかし、それは強くなり、敵がいなくなった頃に芽生え始めた思い。
だが、最初は違っていた。
(あの風は、確かあの人はなんて言ってたか?)
『風?ああ、もしかしてお前、「太刀風」に魅入ったのか?
だとしたら俺もだ。あの風に俺も魅入っちまったんだよ・・・』
遠い目をして答える記憶の中の人。
その人が誰だか、思い出せてはいないが、
今の彼にとってそんなことはどうでもいいことだった。
「太刀風、か。そうだったな・・・」
思い出せた昔の記憶。
そして、彼は今後、戦いに、
「スリル」と「太刀風」を追い求めることになるだろう・・・。
後書(と書いて懺悔と読む)
太刀風・たちかぜ
刀を振るった時に起きる風。
あるいは戦闘や戦いぶりの激しく勇ましい様子。
なので、こんな風にしてみました。
でも、なんかラストが変な風な気が・・・(滝汗)
え、えーと、時間的には
一護達が帰って破面が来る前。
みたいな感じです。
欲求不満だった剣八さんに一角が、
何気なーい質問したらぁ・・・。
ってなかんじです・・・ハイ・・・。
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