01:桜の木の下

桜散る季節のなか、
毎年、約束を果たしに彼は思い出の地へと行く。


今はなき、大切な人との数少ない、
約束の場所へ・・・。


『毎年、ここの桜を見に来ましょうね。約束ですよ、白哉様』


病弱だった、妻との数少ない約束の一つ。
毎年、この時期のここの桜を二人で見ること・・・。


たまたま朽木家の当主としての出張で、桜の名所に行くことがあり、
そこであまり世間には知られていない名桜の話を、泊まっていた旅館の女将から聞き、
妻と二人で仕事の合間を見つけて、行ってみる事にした。


そこには、女将の言うとおりとても美しい桜の大木があった。


桜の名所として名をはせている所から少し離れた郊外にある林の中、
たった一本だけのその桜は、とても堂々とした風格がある立派なものだった。


『とても、美しい桜ですね』
『ああ、そうだな・・・』


その年を境に、二人で毎年のその桜を見に行った。
妻が、床に伏せるその年まで毎年必ず・・・。
そして、妻が死んでからも毎年私は一人で桜を見にいった。
約束を、果たすために・・・。


――現在――


「・・・それが、この桜なのですね。兄様」
「そうだ。ルキアには、この桜のことを話すのが遅れてしまったがな」
「いえ・・・。私はその事についてはなんとも思っていません。
 兄様はこうして話してくれたじゃないですか。それだけで、十分です」
「・・・そうか・・・」


ポンと、ルキアの頭に手を置き目の前の桜を見つめる白哉。
その瞳はどこか寂しげだと、ルキアは思った。


(姉様は、兄様と二人でここに来たんだ・・・)


その時のことを思うと、胸がなんだか温かくなる気がするルキア。
そしてある疑問を、自分の兄に聞いてみた。


「しかし兄様、どうして私をここに?
姉様との思い出の場所なら、私など・・・」


その疑問に驚いたのか、ルキアも顔をまじまじと見てくる白哉。
そんな反応が返ってくるとは思ってなかったので、
思わず言葉が小さくなっていくルキアだった。


「何故、だと?」
「は、はい・・」


失礼なことを聞いただろうか?
そのことがルキアの頭の中を回っていく。
だが、白哉はまた視線を桜に戻して、こう言った。


  「・・・思い出の地だからなのだ」
「えっ?」
「ここだからこそ、ルキアに知っていてもらいたかった。
おそらく、緋真もそう、思っているからな」


思いでの地だからこそ。
そう言う彼の眼はとても暖かな光を宿していた・・・。
ルキアは、あふれそうになる涙をこらえ、兄と共に暗くなるまで桜を見つめていった。


「兄様」
「・・・なんだ」
「また、来年もここに来てもいいですか?」
「・・ああ、また来年も来よう」


妻との思い出と共に・・・。
この桜の木の下に、また来よう・・・。



後書(と書いて懺悔と読む)
今回は、ちょっとシックな感じにまとめてみました。
いやはや、やっぱり桜と言ったらこの人ですよね!
いいなぁ、朽木隊長と二人っきりのお花見・・・。(遠い目)
はっ!!
いかん、いかん。危うくトリップしかけるとこでした!
感想、お待ちしておりまーす!




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