03:霧雨
雨の日は、いつも1人だった。
寒くて、暗くて、寂しかった。
でも、いまはもう、違うんだ。
いつも、目覚めると目の前に広がる風景は違っている。
だっていつもフラフラと、
旅とは言えないような旅をしているから・・・。
あたしに、名前と、世界をくれた人と、一緒に・・・。
「・・・・剣、ちゃん?・・・」
昨日、一晩の宿にした洞窟のなかに、
あたしの大事な人はいなかった。
キョロキョロと、周りを見渡しても
外は霧雨が降っていて、よく見えない。
洞窟の奥のほうにも、あの人はいない。
「剣ちゃん?!ねぇ、剣ちゃん、どこっ!?」
視界の悪い、霧雨の中にあたしは飛び込んでいった。
―――ハァ、ハァ、ハァ―――
雨を気にすることなく、あたしは走った。
もっとすごい雨の中を、
たった一人ですごしたことがあるから、こんな雨なんかへっちゃら。
・・・でも、いまは1人でいることが、とてつもなく、怖い・・・。
・・・雨なんかと比べ物にならないぐらい、怖い・・・。
霧雨は、静かに全てを覆い隠す。
そこにあるけれど、ないように見せて、
そこにあったものを、なくしてしまう・・・。
「ハァ、ハァ、・・・どこに、キャ!!」
バシャア!!
「・・・いったぁい・・・」
足から血が出てる・・・。
でも、そんな事よりも、剣ちゃんに会いたい・・・。
「ウッ、ヒック・・・、け、剣ちゃ、ん・・・ヒック・・・」
会いたい、怖い、一人にしないでよぉ・・・剣ちゃん・・・。
「・・・おい、何してんだ・・・」
その声に顔を上げると、捜していた人・・・。
「お前が寝ている間に、飯をって、
やちる!足から血が出てんじゃねぇか!」
目の前にしゃがみこんで、あたしの足を見てくれる人。
大好きな人、大切な人、いなくならないで欲しい人。
「・・・・剣ちゃん、」
「あぁん?なんだ」
ギュュウと、あたしよりも何倍も大きい人にしがみつく。
「・・・もう、あたしの、やちるの所から、いなくならないで・・・・」
そう言って、泣き始めてしまった小さな体を、剣八は抱きしめた。
「当たり前だ・・・。お前は俺が拾ったんだからな・・・」
あたしの怖いものは、
激しい雨でもなければ、人の死体でもない・・・。
霧雨の、霧雨の時に、たった一人でいること。
でも、もういなくならないと、あの人は約束してくれたから、
またあたしの怖いものは、少なくなるんだ。絶対に。
後書(と書いて懺悔と読む)
今回は、やちる視点で書いてみました。
ちなみに、このやちるはもうすぐ、
剣八と一緒に護廷十三番隊に、乗り込むところです。
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